無理のない範囲でトレーニングやストレッチを行うことをおすすめします。
目次
■変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、ひざ関節内の軟骨がすり減ることで、ひざの痛みや関節の変形が生じる病気です。進行性の病気で、初期、中期、末期へと進行していきます。膝が痛いからといってあまり動かさないでいると、膝周りの筋力が低下してしまい、より膝に負担がかかりやすくなるので注意が必要です。
治療法は大きく分けて保存療法(運動療法、薬物療法、関節腔内注射、装具療法など)と手術療法があり、初期の段階では保存療法を行っていきます。
変形性膝関節症の進行過程
正常な ひざ関節 |
大腿骨と脛骨が接するひざ関節は、軟骨が関節への衝撃を吸収し、関節が滑らかに動くように働いています。
また、関節内を満たす関節液もクッションや潤滑油の役割を担っています。 |
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初期の ひざ関節 |
軟骨が徐々にすり減ってきます。激しい痛みはありませんが、動作時に違和感があります。
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進行期の ひざ関節 |
すり減った軟骨のかけらが関節内を覆う滑膜を刺激し、炎症が起こります。
炎症が悪化していくと関節液が大量に分泌されます。
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末期の ひざ関節 |
負担が集中する部分の軟骨が完全になくなると、今度は大腿骨や脛骨が損傷します。こうなると、見てわかるほど膝関節が変形し、歩行は困難になります。
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■変形性膝関節症とリハビリ
変形性膝関節症のリハビリには、保存療法に対するリハビリと、手術後に行うリハビリの2種類があります。今回ご紹介するのは、保存療法に対するリハビリです。こちらは、変形性膝関節症の進行に対する予防のことを指し、関節の可動域を保つためのストレッチや、膝関節を支えるための筋力を鍛えるトレーニング、生活指導などを中心に行います。これらは基本的に自主的にご自宅で行っていただくことが可能です。リハビリというと、手術後に病院で行うことで、つらいイメージを持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、保存療法に対するリハビリは基本的には適度な運動と、健康的な生活を整えるためのものなので、どなたでも手軽に行っていただけます。
■リハビリ① ストレッチ
ストレッチは、関節の可動域を拡げて柔軟性を高める効果が期待されます。筋肉の緊張状態ををほぐし、血行改善効果も期待されるため、運動やトレーニングと組み合わせて行うことで、より効果的に膝周りの筋力を鍛えることが可能です。
<仰向けで行うストレッチ>
目安:1日あたり3セット
・準備
:バスタオルを1枚用意しておく。
①ストレッチを行いたい方の足を曲げたら、タオルを足にかけてかかとをお尻に近づけるように引き寄せる。
(タオルが必要ない方は、手を使って行いましょう)
②止まったところで5秒間キープする。
(無理のない範囲で行いましょう)
③①~②を5~10回繰り返す。
■リハビリ② 筋力トレーニング
膝の周辺の筋肉を鍛えることは、痛んだ膝関節を保護することに繋がります。具体的には大腿四頭筋(太ももの前側にある大きな筋肉)、内転筋(太ももの内側の筋肉)、中臀筋(お尻の横側にある筋肉)、ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)などの筋肉などです。
以下にご自宅で行っていただけるトレーニングをご紹介します。ぜひお試しください。
<大腿四頭筋(太もも前面)のトレーニング>
<椅子を使ったトレーニング>
目安:1日あたり3~5セット
・準備
:折りたたんで厚みを持たせたバスタオルを鍛えたい方の足の下に敷く。
①片足を2秒間かけてまっすぐに伸ばし、10秒間キープする(姿勢を正すようにしましょう)。
②2秒間かけて足をおろす。
③①~②を10~15回繰り返す。
<内転筋(太ももの内側)のトレーニング>
<横になって行うトレーニング>
目安:1日あたり3セット
・最初の姿勢
:鍛えたい方の足が下になるように横向きになり、下の足は伸ばし、上の足の膝は曲げておく。
①下にある足を10センチ程度を目安に上げていく(無理のない範囲でOK)。
(上半身の姿勢が崩れたり、上げている足の膝が曲がらないように注意しましょう)
②3秒間かけて足を上げ、3秒間かけて下ろす。
③①~②を10回繰り返す。
<中臀筋(お尻と太もも)のトレーニング>
<仰向けになって行うトレーニング>
目安:1日あたり3セット
①膝を90度に曲げて、足は肩幅に広げ、その状態でお尻を天井に向けて持ち上げていく
(肩から膝までが一直線になるようにしましょう)
②3秒間かけてお尻を上げ、3秒間かけて下ろす。
③①~②を10回繰り返す。
<ハムストリングス(太ももの裏側)のトレーニング>
<うつ伏せで行うトレーニング>
目安:1日あたり3セット
①鍛えたい方の片足を少し開き、かかとを同じ側の脇腹につけるように、3秒間かけて曲げていく。
(曲げる時にお尻が浮いたり、体が斜めにならないように注意しましょう)
②3秒間かけて足をおろす。
③①~②を10回繰り返す。
■リハビリ③ 有酸素運動
有酸素運動とは酸素を体内に取り込みながら比較的ゆっくりと行う運動のことです。具体的にはウォーキング、サイクリング、アクアビクス(水中でのエアロビ)などが挙げられます(ジョギングも有酸素運動ですが、膝への負担を考慮すると、変形性膝関節症の患者さんにはお勧めしません)。これらの運動は余分な脂肪を燃やすことで筋力を増強し、体重を減らすといった効果が期待できます。体重が減るということは、日常的にかかる膝への負担が軽減することを意味するので、その結果痛みの軽減も期待できるというわけです。実際、有酸素運動を行うと、行わなかった場合に比べて痛みのスコアが小さくなったという調査結果もあります[1]。
■リハビリ④ 食事のバランスを整える
食事のバランスを整える理由は、有酸素運動と同じく体重のコントロールのためです。とはいえ、急激なダイエットは体に良くありません。ゆっくりとしたペースで減量しながら、太りにくい体に変えていくことを心がけてください。ポイントは次の3点です。
1. 食事時間と量に気をつける
3食を毎日だいたい決まった時間に食べるようにしましょう、朝食を抜いたり、夜寝る直前に食べるのも避けてください。また、夕食後はほとんど活動しないので、量が多くなりすぎないように気をつけることも大切です。
2. 野菜は意識して多めに摂取する
野菜はエネルギーが低く、ビタミンやミネラルを豊富に含みます。しかし、意識して摂取するようにしなければ不足しがちです。1食で摂取した野菜の量は、生野菜なら両手のひら一杯分、火を通したものなら片手のひら分が目安になります。
3. 間食はなるべく控える
間食はなるべく控えるようにして、もし摂取する場合もお菓子類は控えてください。もし食べる場合は果物や乳製品をお勧めします。習慣化していて急に変えるのは難しい場合は、お菓子の買い置きをしない、袋ごと食べずに取り分けて食べるといったちょっとした工夫から始めるのもありです。
■変形性膝関節症の進行が気になる場合はクリニックへ
変形性膝関節症は、進行性の病気です。症状が進行してくると膝の痛みが増し、ストレッチや筋力トレーニング、有酸素運動と言ったリハビリが難しくなってくる可能性があります。膝の痛みが強い場合はリハビリを中止し、一度クリニックで診てもらうようにしましょう。当院では、MRI検査と専門医の診断が一緒に受けられるMRIひざ即日診断をご用意しております。変形性膝関節症の状態を詳細に確認したいという方、専門医に今後の変形性膝関節症の治療についてご相談されたいという方は、ぜひ一度当院を受診ください。